2026/09/25 離婚・男女問題
不倫の慰謝料を請求されたら|相場・減額できるケース・示談の進め方
内容証明郵便が届いた日の夜に、この記事にたどり着いた方が多いはずです。
封を開けて、請求額を見て、頭が真っ白になる。誰にも相談できない。とにかく早く終わらせたい——その気持ちのまま動いてしまうと、選べたはずの選択肢が減っていきます。
はじめに、お断りしておきます。不貞行為があった以上、責任を負うべき場合があることは当然の前提です。この記事は、責任を免れる方法をお伝えするものではありません。
一方で、請求されている金額が法的な相場に照らして妥当かどうかは、それとは別の問題です。事情は一つひとつ異なり、結論も大きく変わります。ご自身の事案を正確に把握したうえで、適正な金額で、確実に終わらせる。そのための情報を整理します。
この記事では、届いた直後にやってはいけないこと、慰謝料の相場の考え方、金額を左右する事情、そして示談をまとめるときに必ず確認すべき条項までを順に整理します。
内容証明が届いたら、まずやってはいけない3つのこと

最初にお伝えしたいのは、これから何をするかより、何をしないかです。
① すぐに支払う
請求書に記載された金額は、相手方が希望している金額であって、法的に確定した金額ではありません。振り込んでしまうと、後から「払いすぎだった」として取り戻すのは容易ではありません。また、示談書を交わさないまま支払うと、後日あらためて請求を受けるおそれもあります。
② 感情的に返信する
謝罪の気持ちから経緯を詳しく書いてしまう、あるいは反発して事実と異なることを書いてしまう。どちらも、後の交渉や裁判で不利な証拠として使われることがあります。相手と直接会って念書や謝罪文を書くことも同様です。
③ 無視する
反応がなければ、相手方は交渉ではなく訴訟を選びます。裁判所からの書類には対応期限があり、放置すれば相手方の主張どおりの判決が出る可能性があります。話し合いで解決できたはずの事案が、対応しなかったために満額の判決になることは現実に起こります。
届いた書面は、破棄せずそのまま保管してください。封筒も含めて、いつ・誰から・何を請求されたかを示す資料になります。

不貞の慰謝料の相場|裁判例で見る幅

不貞行為に対する慰謝料には、法律で定められた金額はありません。裁判例の積み重ねから、おおよその傾向が見えているにすぎず、事案ごとの事情によって大きく変わります。
金額を左右する主な要素は次のとおりです。
| 要素 | 金額が高くなりやすい方向 | 金額が低くなりやすい方向 |
|---|---|---|
| 婚姻期間 | 長い | 短い |
| 子どもの有無 | いる(とくに未成熟子) | いない |
| 夫婦関係への影響 | 離婚や別居に至った | 婚姻関係が継続している |
| 不貞の期間・回数 | 長期・多数回 | 短期・少数回 |
| 不貞に至った経緯 | 積極的に働きかけた | 相手方配偶者の側に主導性があった |
| 社会的な影響 | 妊娠・出産などの事情がある | 特段の事情がない |
一般的な傾向として、婚姻関係が継続しているケースよりも、離婚や別居に至ったケースのほうが高額になりやすいとされています。裁判例で認められる金額は、請求書に記載された額を下回ることが少なくありません。
大切なのは、金額そのものを覚えることではなく、「自分のケースがどの要素に当てはまるか」を整理することです。その結果、請求額がおおむね妥当だと分かることもあります。それも一つの答えです。
減額や免責が認められることがある事情
以下に挙げるのは、法律上そうした判断がなされ得る類型です。ご自身の事案が当てはまるとは限りません。当てはまらない場合は、適正な金額で誠実に解決することを目指すことになります。それが結果的に、この件を最も確実に終わらせる方法です。
すでに夫婦関係が破綻していた
不貞行為より前に夫婦関係が実質的に破綻していた場合、保護されるべき婚姻共同生活の平和という利益がすでに失われていたとして、賠償責任が否定されたり減額されたりすることがあります。
ただし、「別居していた」「家庭内別居だった」という主張だけでは足りず、破綻を裏づける事情を具体的に示す必要があります。別居の開始時期と期間、生活費の授受の有無、離婚に向けた話し合いの経緯などが判断材料になります。
既婚であることを知らなかった(故意・過失がない)
相手が既婚者であると知らず、かつ知らなかったことに落ち度もなかったといえる場合には、責任を負わないという結論になり得ます。
マッチングアプリで独身と表示されていた、指輪をしていなかった、一人暮らしだと聞かされていた——こうした事情は主張の出発点になりますが、それだけで直ちに認められるわけではありません。当時のやり取りが残っているかどうかが重要になります。
肉体関係の証拠が不十分
慰謝料が認められるには、原則として肉体関係があったことが前提となります。同じ建物に出入りした記録や、親密なやり取りだけで直ちに認定されるとは限りません。
もっとも、状況によっては複数の間接事実から推認されることもあります。「証拠がないから大丈夫」と安易に判断せず、相手方が何を根拠にしているかを確認することが先決です。
配偶者からも同額を請求されている(二重取り)
不貞は、配偶者と不貞相手の共同不法行為と評価されます。損害の総額が決まっている以上、双方から満額を回収できるわけではありません。
また、不貞相手が慰謝料を支払った場合、その一部を配偶者側に請求できる場合があります(求償)。示談の段階で求償権をどう扱うかを取り決めておかないと、後に別の紛争が生じます。
支払能力を大きく超えている
資力を超える請求に対しては、分割払いや金額そのものの見直しを話し合うことになります。相手方にとっても、判決を得たものの回収できないという結果は望むところではないため、現実的な着地点を探る余地があります。
なお、不貞を知った時から3年が経過している場合には、消滅時効を主張できる可能性があります。

話し合いの進め方|示談書に必ず入れる条項
話し合いがまとまったら、必ず示談書を作成します。口頭の合意や振込だけで済ませると、後から蒸し返されるリスクが残ります。
これは、支払う金額を抑えたい場合に限った話ではありません。責任を果たすと決めた方にとっても、この件が確実に終わることを担保するのが示談書です。
最低限、次の条項は確認してください。
清算条項
本件に関して、当事者間に他に何らの債権債務がないことを確認する条項です。これがないと、同じ件で再び請求を受ける余地が残ります。
接触禁止条項
今後、相手方配偶者と連絡を取らない、会わないという約束です。違反した場合の違約金を定めることもありますが、金額が過大でないか、範囲が現実的かを確認してください。
口外禁止条項
示談の内容や事実関係を第三者に口外しない、という取り決めです。勤務先や家族に知られたくない場合、双方向の義務として定めることが重要です。
求償権の取扱い
支払った慰謝料について、配偶者側へ求償するかどうかを明記します。求償しないと定める場合は、その分を金額の調整に反映できることがあります。
分割払いの場合の条件
支払回数、支払日、振込先に加えて、支払いが滞ったときの取り扱い(期限の利益喪失条項)を確認します。ここが厳しすぎると、一度の遅れで残額を一括請求されることになります。
相手方が用意した示談書に署名を求められている場合は、署名の前に内容をご確認ください。条項が一方的になっていることは珍しくありません。
弁護士に依頼するメリットと費用の目安
弁護士に依頼する最大の効果は、相手方との直接のやり取りを断てることです。窓口が弁護士に移れば、感情的な連絡に振り回されることがなくなり、勤務先や自宅への連絡も止められる場合があります。
加えて、次の点が変わります。
- 請求額が相場に照らして妥当かを判断できる
- 責任を負うべき範囲を正しく見極めたうえで、主張すべき事情を証拠とともに整理できる
- 示談書の条項を精査し、将来の紛争の芽を摘める
- 訴訟に移行した場合もそのまま対応できる
費用については、料金ページをご確認ください。ご相談の段階では、届いた書面と、当時のやり取りが残っていればそれをお持ちいただくと話が早く進みます。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社に知られますか?
A. 通常、勤務先に連絡が行くことはありません。ただし、相手方が感情的になっている場合や、給与の差押えに至った場合には、可能性がゼロとは言えません。早い段階で窓口を弁護士に一本化することが、結果的に最も確実な対策になります。
Q. 家族に内緒で進められますか?
A. ご相談の連絡方法や書類の送付先は、ご希望にあわせて調整できます。ご相談時にお申し付けください。
Q. 自分に非があることは分かっています。それでも相談してよいのでしょうか?
A. はい。むしろ、そうした場合こそご相談ください。責任を果たすとしても、その金額が適正であること、そして示談書によってこの件が確実に終わることは、同じくらい大切です。条項の不備から、支払った後に再び請求を受けたという例もあります。
Q. 裁判になったらどうなりますか?
A. 訴訟では、相手方が不貞行為の事実と損害を主張・立証し、こちらは認められるべき事情を主張していくことになります。判決に至らず、途中で和解が成立することも多くあります。
Q. 時効はありますか?
A. 損害および加害者を知った時から3年で消滅時効にかかるとされています。ただし、起算点がいつかは争いになることがあります。
Q. 一度払ってしまったら、もう何もできませんか?
A. 状況によります。示談書を交わさずに支払った場合や、錯誤があった場合など、争う余地が残ることもあります。まずは経緯をお聞かせください。
まとめ|適正な金額で、確実に終わらせるために
不貞慰謝料の事案で結果が分かれるのは、多くの場合、請求を受けた直後の数日間の対応です。
請求額をそのまま受け入れるのか、根拠を確認したうえで話し合うのか。示談書の条項を読んでから署名するのか、言われるままに署名するのか。この違いが、最終的に支払う金額と、この件が本当に終わるかどうかを左右します。責任を果たすべき事案であっても、そこは変わりません。
返信をする前に、支払う前に、一度ご相談ください。届いた書面を拝見すれば、見通しをお伝えできます。


